本体が多層に作られているため、保温性に優れ、わずかな給気で燃えるよう、さらに少量の薪でも、高温に保ってくれるので完全燃焼させることが可能。
陶芸窯は、耐火レンガで内部を作成後、大量の土によって断熱されていく。室内用の電気、ガス窯などは10㎝以上の断熱材によって高温を保つ。
Wood stove information news
Vol.1-2 2019-09-15
【高断熱式薪ストーブが重要の理由】
薪ストーブ「気密性?」それとも「断熱性?」
皆様は薪ストーブの熱源を、どのようなイメージでとらえているでしょうか?
炉内に沢山の薪を入れ、その熱源を室内に輻射する、いわゆる輻射式暖房器具…
勿論、正解ですが、『ちょっと待って!!』
昔、吉田兼好が書き残した徒然草の一説に「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」とあるように日本の家屋は風通しを優先とした「低気密・低断熱」がつい先日まで主流だったことは皆様がご存知の通りです。
しかし、近年は法律も変わり「省エネ住宅」いわゆる高気密・高断熱住宅が義務化になってきています。そのことにより『薪ストーブは断熱性が重要』になりました。
「なぜ、薪ストーブに断熱性?」と思われるでしょう。
答えは、安全な「完全燃焼」を連続的に続けることが、容易ではなくなったのです。
近年の省エネ住宅は24h換気で室内空気を制御しているため、薪ストーブ燃焼用の酸素は室内酸素に依存せず、専用の給気ダクトで屋外から薪ストーブ用燃焼酸素を取り入れなくてはなりません。(とても重要です)
しかし、外気導入酸素は「冷たく」「少ない」ため、ガスの燃焼温度である550℃以上に保つことが“一番の大きな課題”になります。
伝統的で、歴史ある輻射式薪ストーブでは、断熱性能が近年の製品より劣っているため、炉内に薪を大量に入れなくてはなりません。その行為は正しいでしょうか。
上記で述べているように、外気導入での少ない酸素で「体積の大きな大量の薪」を燃やそうとする行為は、酸素不足によって無理が生じます。結果、不完全燃焼になり、上昇気流いわゆるドラフトが減少し、そのことにより給気酸素の量がさらに減少し、不完全燃焼は加速します。
逆に、伝統的な輻射式ストーブをきれいに完全燃焼させるためには、輻射(本体放熱)によって奪われた火室の熱量を高める必要があります。そのためには、少ない酸素量でも不完全燃焼にならない「小さな薪」で、燃焼用空気も全開にして燃やすことが必要になります。その行為は、燃費が悪く大量の薪を使用するため現実的とは言えません。
また、従来の日本住宅であれば、不完全燃焼を起こしてもご近所のご迷惑になる程度だったかもしれませんが、昨今の24h換気住宅の場合は、煙の逆流や、最悪の場合、有毒ガスの逆流にもなりかねません。とても危険です!
未燃焼ガスを発生させずに、完全燃焼するためには、「焼却炉」や「陶芸窯」のように、本体の断熱性能を高め、外部に熱を逃がさずに、火室の温度を常に高温に保つ必要性があるのです。
お解りですか?「焼却炉」でも「陶芸窯」でも「薪ストーブ」でも断熱性能が悪ければ、大量の酸素で過剰燃焼させなくてはならないのです。
不完全燃焼を起こさずに安全で近隣トラブル無く、快適で安全な薪ストーブライフを行うためには、住宅性能(気密・断熱)に合わせた薪ストーブを選び、しっかりとした施工、さらに使用者の知識が、今後の薪ストーブライフには必要となるのです。