Vol.1-3 2019-09-15
人に語りたくなるほどの美しさ
まず、ドイツの販売ディーラーが、口をそろえて一番に語るストーリーからご紹介いたします。右写真の、本体、さらに上下のボックスをご覧ください。4枚の鋼の板を組み合わせてボックスをつくるのですが、驚きなのは、その接合部。本体や蓄熱ストーンなど、重量物を支えるものだとは、とても信じがたい仕上がりです。
鋼の素材は、柔軟で弾力があり、強靱なのが特徴です。そのことから、鋼板製品のほとんどはコストの安価な折り曲げ加工をするのが世界の薪ストーブ業界の常識です。初期型のエレメンツコーナーの試作品も、最初は溶接ではなく折り曲げ加工で制作されたのですが、スキャンサーム社がエレメンツに求める製品クオリティーに届かなかったため断念しました。
エレメンツの最大なる特徴である、6㎜ずつのシャドウラインと、規則的に組み立てられる美しいボディラインを表現することを目指したためです。
その結果、溶接を重ね、「削り」「研磨」を重ねる工程で、エレメンツはハイクオリティーを実現しました。そして、エレメンツコーナー2.0でも、そのエッジの美しさを表現し、ディテールのきめ細かさを実現するに至りました。
見れば見るほど、スキャンサーム製品に対するスタッフのプライドが見えてくるはずです。
バーミキュライトの遮熱力は「厚み」+「圧縮率」
エレメンツコーナー2.0のバーミキュライトを見てみましょう。
バーミキュライトには、圧縮率を表す番号があり、600番、800番、1000番とあります。勿論、圧縮率が高ければ高いほど高額になることは言うまでもありませんが、このエレメンツ2.0は800番を使用しています。「なぜ、製品クオリティーに妥協しないスキャンサームが800番?」と思われるところですが、1000番は硬く割れやすい為だということです。
そしてここが、スキャンサーム。なんとバーミキュライトの厚みが、通常20㎜程度と言われるところ、火室内の温度を下げない為に30㎜もの厚さで、外部に熱を逃がすことを遮断しています。
さて、新しく生まれ変わったエレメンツコーナー2.0の断熱性能をご覧頂きたいと思います。従来型のエレメンツコーナーでは、一番外側の化粧ボディーを外すと、即座に断熱材が充填してありましたが、エレメンツコーナー2.0では、30㎜のバーミキュライトで外部への放熱を遮断し、さらに、その外部に空気層を設けた構造になっています。一見すると「対流式?」と思えるかもしれませんが、もう少し奥が深いです。火室内部の温度を下げないことを目的として、空気断熱されているので、熱を本体から放出して、上部に熱を発散させる対流式薪ストーブとは大きく異なります。エレメンツコーナー2.0は、本体ボディすぐ外側の空気層から、上部への流動経路を通り、蓄熱ストーンボックスへと向かう仕組みになっています。
断熱材から、2.0は空気流動層へ
知れば知るほどスキャンサーム、これぞ、エレメンツコーナー2.0
エレメンツ2.0は、ロックなし
次に、スキャンサームの桁違いの製品クオリティーをご紹介したいと思います。
左写真の赤丸をよくご覧ください。通常、扉の開閉に使われるロッキングシステムは、手動のものと、少し高級な半自動式ロックシステムに分けられますが、エレメンツコーナー2.0は驚きの“ロック無し”。
上下の強力なマグネットにより、しっかりとした気密性を実現しています。写真では、実物からわかる驚きは十分にお伝え出来ませんが、あえて言えば、互いのマグネットは、扉を閉じた際に微妙な隙間をあけ間接しないように設計されていて、金属同士がぶつかり合う事がありません。ガスケットにより密閉されているため、空気の流入出もなく、扉を開く際には簡単に開くように設計されています。
針金 1本
スキャンサームにかかると、何もかが驚きの連続です。当たり前と見過ごしがちですが、なんと、この「針金1本」で自動に閉まる動きを調整しています。メイド・イン・ジャーマニーと称えられるのにふさわしい構造部です。
ガラスの気密は安全の証
ガラスの固定は、ビスではなく、気密の高いステンレスホールドで完全固定するところが、さすが、スキャンサームです。
薪ストーブは使用頻度により、扉の各箇所のガスケットを取り換える必要性があります。理由はガスケット劣化による有毒ガスなどの逆流を防ぐためです。また、扉は毎日数回開け閉めを繰り返しますので、ガラスと本体の気密ガスケットも重要になります。
近年はガラスから熱回収する縦型薪ストーブが主流なため、ガラス面がとても大きくなってきています。そのため、スキャンサーム最新機種は全てこのようなホールドを採用しております。
世界初の組み立て式
世界初の組み立て式薪ストーブの接続技術は見えないところまで美しく圧倒的です。
上部に蓄熱ボックスを重ね、デザインと機能性を高めるエレメンツは、「本体」と「400ボックス」、「603ボックス」の3つの要素からインテリアとしての可能性をさらに高めていきます。
今後、外気導入用の給気アダプターは、新築に必要不可欠です
外気導入用の給気アダプターは、今後ますます重要になる“酸素の入り口”です。3枚ある写真(左)は固定タイプの通常給気口です。他2枚の写真(中央、右)は、スキャンサーム製品ならではのものかもしれません。なぜならば、スキャンサーム製品の多くは空間デザインの可能性を高めるため、本体そのものが回転します。これが、その際に使用する「回転式給気アダプター」です。
Wood stove information news
【解体実証!】
エレメンツコーナー2.0の実力に迫ろう!
今回は、2013年発売のエレメンツコーナーです。エレメンツは、世界初の組み立て式薪ストーブとして、発売以降、コーナータイプに続き2015年にフロント、トンネル、さらに2017年にはラウンドと、世界中の薪ストーブ業界の度肝を抜いています。文字通り、頂点に輝く薪ストーブであることは言うまでもありません。その驚きは組み立て式のデザインだけではなく、扉もすべて純鉄であるオール鋼板を使い、細部に至るまで手作業で「削り」「研磨」を繰り返し、ドイツで最も価値ある賞である「スチールイノベーションアワード2015」において輝かしい功績を残すほどです。さらに今回紹介する“テクノロジー”は、「これが薪ストーブ?」と驚かれる方々も多くいることと思います。中には「薪ストーブにこんな断熱性などは不要だ。」という薪ストーブファンの方々もいるかもしれません。しかし、これが世界の現実であり、省エネ住宅(高気密・高断熱住宅)で安全で快適に薪ストーブライフを送るためにはこれほどのテクノロジーが必要だということを是非知っていただきたいと思います。